第50話:止まれない合理
完璧だった。
無駄はない。
誤差もない。
「全域、正常」
バルザーン本陣。
「命中率、安定」
「進軍速度、最適」
「補給、問題なし」
すべてが揃っている。
「……いい」
指揮官が頷く。
「これが我々だ」
合理。
完全。
「押し切る」
短く命令する。
一方。
レグナス。
「……来るな」
小さく呟く。
「何がだ」
バルガスが問う。
「全部だ」
その瞬間。
轟音。
爆発。
正確。
無駄がない。
「……さっきよりやべぇぞ」
バルガスが歯を食いしばる。
「ああ」
短く答える。
強い。
完成している。
「どうする!」
一拍。
「何もしない」
「……は?」
バルガスが固まる。
「何も、だと?」
「ああ」
静かに言う。
「必要ない」
視線は前。
「……意味わかんねぇぞ」
「わかる必要はない」
一拍。
「もう終わっている」
一方。
バルザーン本陣。
「進軍継続」
「抵抗、微弱」
「……当然だ」
指揮官が呟く。
「崩れたな」
合理の結論。
敵は弱い。
なら。
「終わる」
それだけだ。
だが。
「……報告」
副官の声。
「何だ」
「補給線に遅延」
一拍。
「誤差レベルです」
「問題ない」
即答。
誤差は消える。
それが前提。
「修正」
「完了予定、三分後」
一方。
レグナス。
「……始まったな」
小さく呟く。
「何がだ」
「連鎖だ」
一拍。
「止まれない」
静かな声。
合理は強い。
だが。
「止まるという選択がない」
それが弱点。
一方。
バルザーン本陣。
「補給遅延、拡大」
「……何?」
指揮官が眉をひそめる。
「修正は」
「実行中です」
問題ない。
まだ。
「……進軍継続」
命令を下す。
止める理由はない。
その時だった。
「……別方面でも遅延」
「……何だと」
空気が、わずかに揺れる。
だが。
「……問題ない」
言い切る。
「誤差だ」
一方。
レグナス。
「……止まれないな」
バルガスが笑う。
「ああ」
静かに頷く。
「だから」
「崩れる」
その言葉。
静かに響いた。
合理は。
まだ、動いている。
だが。
止まれない。
それが。
終わりの始まりだった。




