表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強だった俺は、もう戦わないと決めた ―辺境小国の宰相として大陸を制す―  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
440/442

第442話:夕暮れの執務室

夕日が王宮の窓を橙色に染めていた。


第三書記室では、最後の書類が閉じられる。


ガルは羽根ペンを置き、大きく息を吐いた。


今日も特別な命令はなかった。


戦争も起きない。


革命も起きない。


ただ、地方から届いた報告へ返書を書き、橋の修繕予定を確認し、冬支度の予算へ印を押しただけだった。


若い書記官が笑う。


「今日も平和でしたね。」


ガルも微笑んだ。


「それが一番難しい。」


「難しい?」


「平和は、毎日続けないと残らないから。」


若い書記官は少し考え込む。


その言葉の意味を、まだ十分には理解できない。


窓の外では、国王が帰路につく馬車へ乗り込んでいた。


護衛たちも穏やかな表情をしている。


ガルは立ち上がり、部屋の窓を閉めた。


廊下には歴代宰相の肖像画はない。


第三書記室で働いた名もない役人たちの名簿だけが、静かに壁へ掛けられている。


その一番古い行。


そこには、百五十年前の一人の名が刻まれていた。


**カイン。**


ガルはその名を見つめることなく、一礼だけした。


尊敬はする。


だが追い掛けようとは思わない。


先祖と同じように、今日の仕事を終えるだけ。


机の灯りが一つ消える。


王宮には夜が訪れる。


誰にも気付かれない場所で、百五十年続いた一日の終わりが、今日も静かに積み重なっていった。


(次話へ)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ