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第44話:終わらせる者



 平原。


 


 帝国軍は、正面に立っていた。


 


 


 隠さない。


 


 歪めない。


 


 


 ただ、真正面。


 


 


「……来たな」


 


 


 バルガスが呟く。


 


 


 


「ああ」


 


 


 


 短く答える。


 


 


 


 


 これが、最後だ。


 


 


 


 


「……どうする」


 


 


 


 バルガスが問う。


 


 


 


 


「正面だぞ」


 


 


 


 


 


「関係ない」


 


 


 


 


 


 静かに言う。


 


 


 


 


 


「もう終わっている」


 


 


 


 


 


 


 その言葉。


 


 


 


 


 


 


 バルガスが、わずかに笑う。


 


 


 


 


 


 


「そうかよ」


 


 


 


 


 


 


 


 帝国軍。


 


 


 


 


 


 


 


 動き出す。


 


 


 


 


 


 


 


 迷いなく。


 


 


 


 


 


 


 


 一直線に。


 


 


 


 


 


 


 


「……本気だな」


 


 


 


 


 


 


 


「ああ」


 


 


 


 


 


 


 


 


 だが。


 


 


 


 


 


 


 


 


「遅い」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 小さく呟く。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 その瞬間。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「報告!」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 兵が駆け込む。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「帝国後方にて混乱!」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「補給線遮断!」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「……なに?」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 帝国側の指揮官が目を細める。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 続けて。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「東部でも同様の動き!」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「他国の軍勢確認!」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 空気が止まる。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「……他国だと?」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 一拍。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 そして。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「……そういうことか」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 男が、ゆっくりと笑う。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「お前か」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 視線がこちらを捉える。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「……ああ」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 短く返す。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「お前たちは、正しく動いた」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「だから」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「こうなる」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 静かな声。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 帝国は、正面戦を選んだ。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 それは合理的だ。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 だが。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「他が動く」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 他の大国。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 中規模国家。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 すべてが。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 帝国の隙を突く。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「……誘導したな」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「ああ」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 否定しない。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「最初から」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 帝国を動かす。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 それが、目的だった。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「……見事だ」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 男が息を吐く。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「勝てる戦を選んだ」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「だが」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「負ける形にされた」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 完全に理解している。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「……それでも」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 一歩、前に出る。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「やるか?」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 最後の問い。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 一拍。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 そして。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 男は、剣を下ろした。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「……いや」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「ここまでだ」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 静かな言葉。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「これ以上は、無駄だ」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 勝敗は決した。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 戦うまでもなく。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「……終わったな」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 バルガスが呟く。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「ああ」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 短く答える。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 帝国。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 最強の小国。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 そして。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 過去。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 それが、終わった。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「……カイン」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 男が、最後に言う。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「お前は」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「戦っていない」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 一拍。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「だが」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「勝っている」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 静かな評価。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「……ああ」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 それだけを返す。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 これが。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 答えだ。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 戦わずに。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 終わらせる。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 帝国編は、終わった。



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