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最強だった俺は、もう戦わないと決めた ―辺境小国の宰相として大陸を制す―  作者: 竜太郎


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第439話:国境の茶屋

レグナス王国北西部。


国境街道沿いに、小さな茶屋が一軒建っていた。


旅人は休み。


商人は馬を休ませ。


巡回兵は湯を飲む。


何十年も変わらない景色だった。


昼過ぎ、一隊の商隊が店へ入る。


荷馬車にはグランヴェルドの紋章。


向かいにはレグナスの農夫たち。


同じ卓を囲み、湯気の立つ茶を飲んでいた。


「今年は雪が早そうですな。」


商人が笑う。


農夫も頷いた。


「橋の補修が終わって助かりました。」


店主が湯を注ぎながら言う。


「今年は荷の遅れも少ない。」


誰も国境を意識していない。


争いの話もない。


そこへ巡回兵が一人入ってきた。


「異常なし。」


それだけ告げて席へ着く。


商人は苦笑した。


「レグナスの兵は静かだ。」


「騒ぐことが仕事じゃないからな。」


農夫が答える。


窓の外では荷馬車がゆっくり橋を渡っていく。


橋脚は去年補修されたばかり。


誰も覚えていない。


誰も話題にもしない。


だが、その橋が今日も荷を運んでいる。


店主は静かに茶碗を洗った。


「平和ってのはな。」


誰に向けるでもなく呟く。


「毎日同じ客が来ることなんだ。」


その言葉に、誰も返事はしなかった。


ただ、皆が少しだけ頷いていた。


(次話へ)


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