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最強だった俺は、もう戦わないと決めた ―辺境小国の宰相として大陸を制す―  作者: 竜太郎


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第425話「港の案内板」

レグナス王国最大の貿易港。港湾長ヘンリックは、夜明け前の桟橋で、新しく設置された「荷役用の巨大な案内板」の文字を点検していた。


「港長、この新しい案内板、品目ごとの置き場が細かく指定されていて分かりやすいですね」


若い荷役人が、アルカディア帝国から到着したばかりの木箱を運びながら言った。


「ああ、中央の通商局が作った最新の規則だ。これからは一分の無駄もなく、正確に荷が整理できる」


ヘンリックは案内板を見つめながら、静かに頷いた。


現場の人間にとっては、ただ事務作業が効率化しただけの、歓迎すべき措置に過ぎなかった。しかし、この「正確すぎる置き場の指定」こそが、中央宮廷の精緻な仕掛けだった。


この案内板の配置は、特定の金属製品が下ろされたときだけ、その置き場が関税の窓口から最も「遠い区画」になるように細工されていたのだ。


軍用の武器や防具の原材料となる特殊な鉄鉱石が届くたび、荷役人たちは長い距離を歩かされることになり、手続きに原因不明のわずかな遅延が発生することになる。一日単位で見ればほんの数十分の遅れだが、それが数ヶ月積み重なることで、帝国の商隊の流通スケジュールは決定的な狂いを生じ始める。


「規則は規則だ。指定された場所に運べ」


ヘンリックは帳簿に数値を書き込んだ。


他国の商人は、ただ不便を囲うだけだ。だが彼らは、この港に足を踏み入れた瞬間から、その流通の速度にいたるまで、宮廷の奥にある見えない手によって、完璧に速度を落とされていた。

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