表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強だった俺は、もう戦わないと決めた ―辺境小国の宰相として大陸を制す―  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
422/442

第424話「地方の土砂」

レグナス王国西部の山林地帯。地方役人のトベムは、崩れかけた古い炭焼き小屋の跡地で、職人たちの作業を監督していた。


「トベムさん、こんな誰も通らない斜面に、なんでわざわざ『土留めの杭』を打つんですか?」


地元の若い人足が、丸太を地中深く打ち込みながら不思議そうに尋ねた。


「中央からの山林保護計画に入っているんだ。文句を言わずに、指示された通りの深さで丸太を並べてくれ」


トベムは手元の図面を睨みつけながら、淡々と答えた。


普通の役人なら、また宮廷の予算消化のための無駄な工事だと吐き捨てるだろう。だが、トベムがその杭の新しい配置を周囲の地形と照らし合わせてみたとき、ある明確な意図に気づいて息を呑んだ。


この新しく打たれた杭の配列は、大雨が降った際、斜面から流れ落ちる「土砂の流れる方向」を、ほんのわずかに変えるように設計されていたのだ。


秋になり、長雨の季節になると、この杭によって誘導された土砂が、斜面の下にある「小さな沢」を自然と埋め立てる。それにより、隣国グランヴェルドの隠密たちが、国境を越えて潜入する際の「唯一の隠れ道」が、誰の手も借りずに自動的に消滅することになるのだ。


大々的に兵を配備して国境を監視すれば、それは敵を刺激することになる。だが、ただの土留めの杭の配置を数寸変えるだけで、自然の雨が、敵の隠密ルートを勝手に塞ぐ。


「私たちの仕事は、ただ図面通りに丸太を打たせることだ」


トベムは次の杭を指さした。


誰も気づかないほど自然に、世界の隙間が、レグナスの宮廷の欄外の文字によって、完璧にコントロールされていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ