第42話:見ないという選択
朝。
混乱は、続いていた。
報告は増え。
問題は広がる。
だが。
「……いい」
小さく呟く。
「何がだ?」
バルガスが問う。
「見えた」
短く答える。
「……何が」
「全部だ」
静かな声。
帝国の狙い。
内部崩壊。
責任の圧。
すべて、理解した。
「ならどうする」
一拍。
「見ない」
「……は?」
バルガスが眉をひそめる。
「何言ってんだ」
「全部を見る必要はない」
静かに言う。
「崩れない形にする」
沈黙。
「……それができるのか?」
「できる」
即答。
そして。
「やる」
机の上の書類を押しのける。
「伝令」
声を上げる。
「全管理区に通達」
空気が変わる。
「中央判断を停止する」
「……は?」
ざわめきが走る。
「各区に委任」
「責任も含めて」
静かな宣言。
「……おい、それは」
バルガスが言う。
「崩れるぞ」
「崩れない」
即答。
「なぜ言い切れる」
一拍。
「選んだからだ」
短い言葉。
「理解している人間を」
あの男。
そして、各地の人材。
「任せる」
それが答えだ。
「……狂ってるな」
バルガスが苦笑する。
「全部手放すのか」
「違う」
首を振る。
「形を変えるだけだ」
中央で抱えない。
分散する。
それで。
「崩れない」
沈黙。
そして。
「……なるほどな」
バルガスが笑う。
「見えなくても回る形か」
「ああ」
それが。
新しい答えだ。
その時だった。
「報告!」
兵が駆け込む。
「各地、混乱……」
一拍。
「……収束しています!」
空気が止まる。
「……早いな」
小さく呟く。
「自分で判断している」
中央を待たない。
だから、速い。
「……やっぱり狂ってるわ」
バルガスが笑う。
「でも」
「勝ってるな」
「ああ」
静かに頷く。
帝国の狙いは外れた。
内部崩壊は起きない。
なぜなら。
「最初から崩れない形にした」
それだけだ。
その時。
ふと、呟く。
「……見えなくてもいい」
「崩れないなら」
それが。
答えだった。




