第41話:あの日の戦
夜。
珍しく、静かだった。
外では混乱が続いている。
だが、この部屋だけは違う。
「……起きてるでしょ」
声。
ルナだった。
「……ああ」
短く返す。
隠す意味はない。
「珍しいね」
ルナが壁にもたれる。
「カインが止まってるの」
「止まってはいない」
そう言いながら。
「……考えているだけだ」
沈黙。
「帝国のこと?」
「ああ」
一拍。
「昔の話、聞いていい?」
その問い。
断る理由はない。
「……あの時」
ゆっくりと口を開く。
「村の後だ」
あの事件。
すべてを失った日。
「帝国が動いた」
「戦争だ」
規模は大きくない。
だが。
「放置すれば広がる」
「……それで?」
「依頼を受けた」
冒険者として。
ただ、それだけの理由。
「一人で?」
「ああ」
沈黙。
「普通じゃないね」
「そうだな」
否定はしない。
「戦場に出た」
その瞬間。
「戻った」
「……何に」
「昔の自分に」
静かな声。
「命を、数字で見る」
ルナの表情が止まる。
「どこを削れば」
「最小で勝てるか」
「それだけを考えた」
感情はなかった。
ただ。
「結果だけを出した」
「……勝ったの?」
「ああ」
即答。
「戦争は止まった」
「帝国は生き残った」
沈黙。
「……でも」
ルナが言う。
「それ、違うよね」
小さく。
「そうだな」
否定しない。
「壊した」
「……何を」
一拍。
「全部だ」
戦場。
街。
人。
残ったのは。
「結果だけだ」
沈黙。
「……だからか」
ルナが呟く。
「今のやり方」
「ああ」
短く答える。
「同じことはしない」
「もう二度と」
静かな決意。
「……でも」
「帝国は知ってる」
ルナが言う。
「その時のカインを」
「ああ」
だからこそ。
「来ている」
崩すために。
その時だった。
「……カイン」
ルナが、一歩近づく。
「どっち選ぶの?」
一拍。
「また、あの時みたいにやる?」
沈黙。
長い。
そして。
「……やらない」
静かに言う。
「やる必要がない」
それが答えだった。
帝国は強い。
だが。
同じやり方で勝つ必要はない。
「……そっか」
ルナが、小さく笑う。
「じゃあ大丈夫だね」
その言葉。
静かに頷く。
「……ああ」
終わらせる。
今度は。
壊さずに。




