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最強だった俺は、もう戦わないと決めた ―辺境小国の宰相として大陸を制す―  作者: 竜太郎


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第412話「地方の補修」

レグナス王国西部の田園地帯。地方役人のトベムは、街道沿いの石垣の前で、職人たちの作業を監督していた。


「トベムさん、ここの石垣、まだ崩れてもいないのに何で積み直すんですか?」


地元の若い石工が、重そうな石を運びながら不満げに尋ねた。


「中央からの定期修繕計画に入っているんだ。文句を言わずに、指示された通りの高さで積み直してくれ」


トベムは手元の図面を睨みつけながら、淡々と答えた。


普通の役人なら、また宮廷の予算消化のための無駄な工事だと吐き捨てるだろう。だが、トベムがその石垣の新しい配置を周囲の地形と照らし合わせてみたとき、ある明確な意図に気づいて息を呑んだ。


この新しく積み直された石垣の高さと角度は、この街道の先にある「突風の通り道」の風向きを、ほんのわずかに変えるように設計されていたのだ。


秋になり、強風が吹く季節になると、この石垣によって誘導された風が、街道の特定の場所に「大量の枯れ葉と砂」を自動的に堆積させる。それにより、隣国グランヴェルドの高速の連絡騎兵たちは、この場所を通る際に必ず馬の足を緩めざるを得なくなるのだ。


大々的に検問所を設けて敵の伝令を止めれば、それは明確な敵対行為となる。だが、ただの石垣の角度を数度変えるだけで、自然の風が、敵の情報伝達を勝手に遅延させる。


「私たちの仕事は、ただ図面通りに石を積ませることだ」


トベムは職人に声をかけた。


誰も気づかないほど自然に、世界の呼吸の速度が、レグナスの宮廷の欄外の文字によって、完璧にコントロールされていた。

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