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最強だった俺は、もう戦わないと決めた ―辺境小国の宰相として大陸を制す―  作者: 竜太郎


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第413話「港の計量器」

レグナス王国最大の貿易港。港湾長ヘンリックは、夕暮れ時の棧橋で、新しく導入された「荷物用の大型天秤」の調整を行っていた。


「港長、この新しい計量器、今までのものより目盛りが細かくて使いやすいですね」


若い荷役人が、アルカディア帝国から届いたばかりの木箱を乗せながら言った。


「ああ、中央の通商局が開発した最新型だ。これからは一リルの狂いもなく、正確に税が計算できる」


ヘンリックは天秤の針を見つめながら、静かに頷いた。


現場の人間にとっては、ただ事務作業が正確になっただけの、歓迎すべき機材の導入に過ぎなかった。しかし、この「正確すぎる目盛り」こそが、中央宮廷の精緻な仕掛けだった。


この天秤は、特定の金属製品が乗せられたときだけ、内部のバネの摩擦によって、計量に「数十秒」の余計な時間がかかるように細工されていたのだ。


軍用の武器や防具の原材料となる特殊なインゴットが下ろされるたび、関税の窓口では原因不明のわずかな滞留が発生することになる。一日単位で見ればほんの数十分の遅れだが、それが数ヶ月積み重なることで、帝国の商隊の流通スケジュールは決定的な狂いを生じ始める。


彼らは、それをレグナスの役所の「厳格すぎる官僚主義」のせいにして諦めていた。


「規則は規則だ。厳密に量らねばならん」


ヘンリックは帳簿に数値を書き込んだ。


他国の商人は、ただ不便を囲うだけだ。だが彼らは、この港に足を踏み入れた瞬間から、その流通の速度にいたるまで、宮廷の奥にある見えない手によって、完璧に速度を落とされていた。

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