表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強だった俺は、もう戦わないと決めた ―辺境小国の宰相として大陸を制す―  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
400/442

第402話「使節の執務室」

グランヴェルド王国の首都にある、レグナス王国大使館の一室。駐在使節のベイムは、本国から届いた定期報告書を読み終え、静かに暖炉の火へと投げ入れた。


報告書には、ただ「今月の王都の降雨量と、街道の補修状況」しか書かれていなかった。


「……これだけの情報で、あの方はすべてを動かしているのか」


ベイムは、燃え尽きていく紙切れを見つめながら、背筋に冷たいものが走るのを禁じ得なかった。


他国の大使館であれば、現地の貴族を賄賂で買収し、軍事機密の書類を盗み出すのがスパイとしての主要な任務だ。しかし、ベイムが本国──宮廷の欄外の主に求められているのは、そうした派手な機密ではなかった。


「市場の野菜の値段」「馬車の車輪の泥のつき具合」「兵士たちの制服のほつれ」


そうした、一見すると国家の興亡とは何の関係もない、ありふれた市井の日常の観察データだけだった。


だが、それらの断片的な数字が本国へ送られると、宮廷の奥にいるあの男の手によって、大国の「軍事予算の隠された使途」や「兵糧の実際の蓄え」へと完璧に逆算され、統治の盤面が先んじて書き換えられるのだ。


グランヴェルドの宮廷貴族たちは、自分たちの最高機密が漏れていると疑い、内部で血生臭い派閥争いを始めている。しかし、情報が漏れているのではない。ただ、彼らの生活の「呼吸の乱れ」が、レグナスに見透かされているだけだった。


「私たちは、怪物の目を務めているに過ぎないな」


ベイムは新しい手帳を開き、今日市場で見た林檎の価格を、淡々と書き込み始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ