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最強だった俺は、もう戦わないと決めた ―辺境小国の宰相として大陸を制す―  作者: 竜太郎


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第384話「世界の天井」

アルカディア、グランヴェルド、セラフィス、ドラグナール。大陸を支える四大国の重鎮たちが、それぞれの宮廷で同じ「違和感」の報告書を手にしていた。


「どこにも、決定的な破綻がない」


帝国の老宰相は、机の上の勢力図を睨みつけながら呟いた。


通常であれば、四大国のどれかが軍備を拡張すれば、他の三国がそれを抑えるために同盟を結び、局地的な戦争が勃発するのが歴史の常だった。しかしここ数年、どれほど緊迫した状況が生まれても、なぜか最後の最後で「物資の不足」や「地方の小さな工事」によって、軍隊が動けなくなる事例が多発していた。


世界は完全に安定している。


誰もがそれを、自国の外交努力や、あるいは偶然の幸運によるものだと信じていた。だが、そのすべての事象の中心にあるレグナス王国という「空白」に、気づいている者は未だにいなかった。


彼らは一度も、他国を侵略すると脅したことはない。ジョーカー騎士団のような最強の武力を見せつけたこともない。


ただ、小国の不安を「親切な協定」で解消し、兵士の服を自国製に変え、港の労働時間を三十分ずらすことで、世界全体のエネルギーを少しずつ、均等に削ぎ落としていたのだ。


巨大な均衡装置としての四大国を、定位置から一歩も動かせないように固定する、見えない糸。


夜が更ける中、レグナスの宮廷の欄外には、今夜も小さな文字が書き足されていく。世界がその異常さに気づくのは、まだ、遥か後世のことでしかなかった。

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