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最強だった俺は、もう戦わないと決めた ―辺境小国の宰相として大陸を制す―  作者: 竜太郎


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第382話「ジョーカーの出陣」

アルカディア帝国の象徴であり、大陸最強の武力と謳われる「ジョーカー騎士団」。その第四席を務める重装騎士のヴァルムは、夕暮れ時の前線基地で、巨大な愛馬の手綱を引いていた。


「ヴァルム様、急報です。東部国境の小領主が、レグナスの商人と小競り合いを起こした模様。即座に出陣し、威圧せよとの命が下りました」


部下が息を切らせて持ってきた指令書を、ヴァルムは冷ややかな目で受け取った。


「また、あの国が絡む事件か」


ジョーカー騎士団が動けば、それは単なる軍事行動ではない。周辺諸国に対する「帝国の激怒」を示す災害に等しい。名前だけで小国を震え上がらせるだけの圧力が、彼らにはあった。


しかし、ヴァルムは知っていた。今回の小競り合いも、数日前にレグナス側が「国境の関税の端数」を意図的に厳しく取り立てたことで、血気の多い帝国の小領主を意図的に怒らせた結果であることを。


彼らは、ジョーカー騎士団を「戦わせる」ために呼んでいるのではない。


騎士団が国境へ出陣したという「事実」そのものが、隣国グランヴェルドやセラフィスに対する、帝国からの無言の軍事的挑応として誤認されるように仕組まれているのだ。


「我々はまた、あの一国の平穏のために、大国同士を睨み合わせる看板として使われるわけか」


ヴァルムは兜を深く被った。


最強の武力を持ちながら、戦場に立つことすらなく、ただの「噂の圧」として消費されていく。カインの仕掛けた盤面の上で、彼らはただ、世界の均衡を維持するための巨大な駒として、今日も虚しく進軍を始めるしかなかった。

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