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最強だった俺は、もう戦わないと決めた ―辺境小国の宰相として大陸を制す―  作者: 竜太郎


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第371話「商人の会話」

セラフィス聖王国の活気溢れる中央市場。その一角にある高級喫茶の個室で、二人の大商人が商談を行っていた。

「レグナスの塩の買い付け、予定通り進んでいるか?」

「いや、それが少し妙なことになってな。こちらの提示した金額に対して、向こうの役所が色をつけて買い取らせてくれと言ってきたんだ」

「色をつける? 値上げを要求されたのか?」

「違う。こちらの利益を増やすために、レグナス国内での保管料を向こうが持つという提案だ。条件はただ一つ、我が商会が所有する船の半分を、来月一ヶ月間だけ、レグナス南部の河川港に停泊させておくだけでいいらしい」

商人の一人が、不思議そうに首をひねった。船を動かす必要はなく、ただ港に置いておくだけで金が貰える。これほど割のいい話はなかった。

「……だが、なぜそんなことをする?」

向かいの商人が、顎を撫でながら低い声で言った。

「セラフィスの大商会の船が、レグナスの港に大量に並んでいる。その光景を、隣国のグランヴェルドが見たらどう思う? まるで、レグナスと我が国が、強固な軍事・経済同盟を結んで物資を集結させているように見えるだろう」

個室の中に、にわかに静寂が広がった。レグナスはセラフィスの国家と交渉することなく、ただ民間の商人の欲を刺激して船を集め、グランヴェルドに対する「無言の抑止力」を作り出しているのだ。

「俺たちは、ただの看板として使われているわけか」

商人は冷めた珈琲を睨みつけた。逆らう理由はなかった。利益はあるからだ。しかし、自分たちの知らないところで世界が動かされていく感覚に、二人は言葉を失っていた。

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