表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強だった俺は、もう戦わないと決めた ―辺境小国の宰相として大陸を制す―  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
360/442

第362話「職人の呟き」

レグナス王国の王都の片隅にある鍛冶工房で、老職人のガルは、納品されたばかりの鉄鉱石の塊を叩いていた。槌が金属に当たる高い音が、薄暗い工房内に規則正しく響き渡る。

「親方、今回の鉄、いつもより少し質が良くないですか?」

不意に弟子が、炉に薪をくべながら声をかけてきた。

「ああ。不純物が少ねえ。グランヴェルドの北の鉱山で採れる、最上等の特産品だ」

「へえ、そんな高いものが、なんでうちみたいな小さな工房に回ってくるんですか?」

「そこが分からねえんだよ」

ガルは槌を止め、火挟みで赤く焼けた鉄を掴み直した。通常、グランヴェルドの最高級鉄鉱石は、あちらの軍部が最優先で買い押さえるため、他国への輸出など制限されているはずだった。だが、今月に入ってから、王都のギルドを通じて信じられないほどの低価格で市場に流れ込んできている。

原因を調べてみても、グランヴェルド側で鉱山が大豊作だという公式な記録はない。ただ、あちらの宮廷で「炭鉱夫の待遇改善に関する法案」が可決され、一時的に採掘の現場が混乱したという、小さな噂が風の便りに届いただけだった。

その混乱の隙を突くようにして、レグナスの卸商たちが一斉に余剰分を買い叩き、王都の職人街へ流したのだ。おかげでレグナス国内の武器や農具の質は底上げされ、逆にグランヴェルドの兵器生産は予定を狂わせている。

「偶然にしちゃ、話が出来すぎてやがる」

ガルは再び槌を振り下ろした。火花が散る中、職人の世界にまで及んでいる、名前も知らない宮廷の何者かの恐るべき手腕に、ガルはただ言葉を失うしかなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ