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最強だった俺は、もう戦わないと決めた ―辺境小国の宰相として大陸を制す―  作者: 竜太郎


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第359話「倉庫の空白」

グランヴェルド王国の兵站部に所属するロウは、遠征軍のための備蓄倉庫の中で、大きな声を張り上げていた。

「なぜ火薬の原料である硫黄の納入が遅れている! 今月までに予定の八割が揃うはずだろう!」

怯える部下が、震える手で報告書を差し出した。

「申し訳ありません。仕入れ元である南方の山岳地帯で、急な土砂崩れが発生し、街道が完全に封鎖されたとのことで……」

「土砂崩れだと? そんなものは人足を注ぎ込んで数日で片付けさせろ!」

「それが、その土地を領有する小国が、レグナスとの間で別の治水工事の契約を結んだばかりで、人員がすべてそちらに割かれているのです。我が国の抗議にも、民間との契約が優先だと聞く耳を持ちません」

ロウは拳で壁を叩いた。偶然にしては、あまりにも時期が悪すぎる。グランヴェルドが遠征の準備を始めたまさにその瞬間に、最も重要な物資の通り道が、合法的な工事によって塞がれたのだ。レグナスが直接我が国を妨害したわけではない。彼らはただ、遠く離れた小国と、何でもない公共事業の約束を交わしただけだ。

しかしその結果として、グランヴェルドの軍事行動は完全に足止めを食らう形になった。

「……謀られたのか」

ロウは冷や汗が背中を伝うのを感じた。戦場に姿を現すこともなく、ただ遠くの村の工事計画を一つ動かすだけで、大国の軍隊を無力化する。この執拗なまでの計画性の前に、ロウは得体の知れない恐怖を抱かざるを得なかった。

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