346/442
第348話「夕暮れの橋」
夕暮れ時、ガルスは橋の欄干に手をついて川を見ていた。
今日は朝から荷馬車が十七台通った。
去年の同じ時期の記録を思い出す。たしか十一台だった。
六台増えた。理由はよくわからない。ただ増えた。
川の水は変わらず流れている。橋の石は変わらず固い。ガルスがここで記録を取り始めてから、川も橋も何も変わっていない。
変わったのは、橋を渡る人の数だけだ。
「お疲れさん」
交代の番兵が来た。
「お疲れさん」
ガルスは帳面を渡した。
「今日も普通か」
「普通だ」
荷馬車が十七台通った。でも「普通」と言った。
以前は十一台が普通だった。いつの間にか十七台が普通になった。
変化は静かに来る。
誰かが叫んで変わるのではない。気づいたら変わっている。
橋の上に夕日が差していた。川の水がゆっくりと、西へ向かって流れていく。




