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第347話「帳簿の空白」
帝国軍の後方補給担当ロウは、古い帳簿を開いていた。
三年前の遠征記録だ。
「この欠損、正式な記録に残ってるか」
部下に問うと、部下は少し言いにくそうにした。
「……残っています。ただ」
「ただ?」
「原因の欄が空白です」
「空白?」
「補給物資の大半が失われたことは記録されています。しかし、なぜ失われたかについては、記録がありません」
ロウは眉をひそめた。
「内部の混乱だったはずだ。護衛部隊と輸送部隊が衝突した」
「その記録もありません」
「なぜ」
「……調査した者がいなかったようです。或いは」
部下は続きを言わなかった。
或いは、調査できなかった。
ロウは帳簿を閉じた。
三年経っても、あの遠征の真相は誰も把握していない。補給が壊滅した理由は、今も帳簿の中で空白のままだ。
空白には意味がある。ただ、それが何の意味かは、まだわからない。




