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最強だった俺は、もう戦わないと決めた ―辺境小国の宰相として大陸を制す―  作者: 竜太郎


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第346話「写本室の記録」

写本室の書記エルムは古い文書を調べていた。


今日の仕事は五年前の通商協定の写しを作ることだ。だが準備のために引っ張り出した束の中に、気になる文書が混じっていた。


三年前の宰相府発の内部覚書。


内容は補給路の安全確保についてだ。特に目を引いたのは日付だった。


ヴァルディアが侵攻を開始する、ちょうど一月前の日付だった。


エルムは首をひねった。


侵攻の一月前に、補給路の脆弱性について詳細な分析が行われていた。


偶然か。それとも、先に知っていたのか。


だが写本室の書記がそんなことを考えても仕方ない。仕事は写しを作ることだ。


元の文書を棚に戻して、エルムは自分の作業に戻った。


ただ、写しを作りながらもずっと、あの日付のことが頭の片隅に引っかかっていた。


誰かが、何かを知っていた。


その誰かが誰なのかを、エルムは考えたくなかった。

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