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最強だった俺は、もう戦わないと決めた ―辺境小国の宰相として大陸を制す―  作者: 竜太郎


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第340話「欄外の文字」

ガルスは橋番の仕事を十二年続けている。


記録するのは通行した荷馬車の数と種類と、荷の概要だ。それ以外は書かなくていいと言われていた。


だがいつからか、欄外に言葉を添えるようになった。


夜の急ぎ荷。医薬品と思われる荷物。急行の理由は不明。


そういった一文だ。


先月、巡回に来た上役が帳面を見た。何も言わなかった。持っていきもしなかった。ただ、ページをめくる手が一度止まった。


今月に入って、ガルスの担当区域が一区間増えた。


昇進でも給料増でもない。ただ、担当範囲が広がっただけだ。理由は説明されなかった。


ガルスはそれを、何かの返事だと思っている。


言葉にはならない返事。でも確かに返事だ。


今日も橋を荷馬車が渡った。夜中に通った一台の荷台が少し気になって、ガルスは欄外に書き足した。


夜間通行。布で覆われた木箱、二梱。御者は二名。急ぎの様子あり。


書き終えて、帳面を閉じた。

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