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第339話「道の値段」
「去年と比べると、荷が増えた」
商人のセランがそう言ったのは、街道沿いの宿の食堂だった。
向かいに座った同業者のハルムが、麦酒を一口飲んで頷いた。
「増えたな。俺のところも同じだ」
「いいことだと思うか」
ハルムは少し考えてから答えた。
「……どっちとも言えん」
荷が増えれば儲かる。それは正しい。だが荷が増えるということは、街道を行き来する人間も増えるということだ。競争が増える。値段を崩す連中も出てくる。
去年まではこのあたりの交易を、地元の商人が大体握っていた。今は遠くから入ってくる奴らも増えた。
「道が良くなったからな」
「そうだ。道が良くなって、荷が増えて、競争が増えた」
セランは自分の杯を眺めた。
「得したのか損したのか、まだわからん」
ハルムが笑った。
「そういう時代になったんだろ」
窓の外を、荷馬車が一台通り過ぎた。荷台には見慣れない紋章が入っていた。




