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第333話「宿の増築」
宿屋の主人が大工と話していた。
増築の相談だった。
部屋を二つ増やしたい。
だが費用がかかる。
大工は図面を広げた。
「この壁を抜けば、一部屋はすぐ作れる」
「もう一部屋は」
「離れを建てる」
「いくらかかる」
数字が出た。
主人は少し黙った。
払えなくはない。
だが余裕があるかといえば、そうでもない。
「急ぎますか」
大工が聞いた。
「急ぐ理由は?」
「最近、断った客がいるでしょう」
主人は頷いた。
満室が続いていた。
断った客が他の宿へ行く。
他の宿がなければ、次の町まで行く。
一度他の場所を覚えると、次も同じ場所へ行く。
「急ぐか」
主人は呟いた。
答えは出ていた。
「離れから始めよう」
大工は頷いた。
翌日から工事が始まった。
主人は夜、帳簿を開いた。
増築の費用を書き込んだ。
赤い数字だったが、今年中に回収できる気がした。




