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第332話「質問の手紙」
アルカディアの地方庁舎に、一通の手紙が届いた。
差出人は遠い村の農夫だった。
内容は短い。
「掲示板の話を旅商人から聞いた。うちの村にも作れるか」
職員のタルはその手紙を上司に見せた。
上司は少し黙った。
「遠いな」
「はい」
「すぐには難しい」
「どう返しますか」
上司は少し考えた。
「正直に書け」
今すぐは難しいこと。
でも要望として記録すること。
将来の検討対象になること。
「それで納得しますかね」
「するかどうかは向こうが決める」
短い返答だった。
「俺たちが決めることじゃない」
タルは返信を書いた。
飾らなかった。
できないことはできないと書いた。
できることはできると書いた。
封をして、出した。
返事が来るかは分からない。
だが手紙が届いたという事実は残る。
誰かが庁舎のことを、遠くで知っていた。
それがタルには少し、不思議だった。




