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第331話「教官の昔話」
訓練の合間、古参教官のドナルが珍しく話した。
若い竜騎兵たちが休憩している時だった。
誰かが聞いたわけではない。
ふと、口が開いた。
「昔、一頭落としたことがある」
誰も何も言わなかった。
「飛行中に墜ちた。竜は死んだ。俺は生きた」
静かな声だった。
感情が薄い。
「なぜ話すんですか」
若い一人が聞いた。
「お前たちが同じことをしないために、ではない」
ドナルは空を見た。
「忘れたくないからだ」
忘れると、軽くなる。
軽くなると、同じことをする。
だから覚えている。
「竜の名前は」
別の一人が聞いた。
「ヴェラ」
すぐに答えた。
今でも忘れていない。
それが答えだった。
若い竜騎兵たちは黙っていた。
慰めも、励ましも、しなかった。
それでよかった。
ドナルは立ち上がった。
「続けるぞ」
訓練が再開した。




