327/442
第329話「新しい店」
橋の先に、小さな店が開いた。
革細工の店だった。
店主は若い男で、どこから来たのかは分からない。
ガルスは朝、その店の前を通った。
「いつ開いたんですか」
「三日前です」
男は革を縫いながら答えた。
「ここを選んだのは?」
「橋があるので」
それだけだった。
橋があるから人が通る。
人が通るから店が成り立つ。
ガルスは帳面を思い出した。
余白に書いた北道崩落の話。
あの後、局の人間が確認に来た。
たった一行だったが、誰かに届いていた。
「橋番さんですか」
男が聞いた。
「そうです」
「橋、助かってます」
礼を言われた。
橋を作ったのはガルスではない。
守っているだけだ。
だが守っていることが、この店を支えている。
ガルスは橋へ戻った。
今日も誰かが渡ってくる。
帳面を開いて、数を数え始めた。




