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第325話「村の水場」
集落の中心に、井戸があった。
正確には井戸ではない。
岩の隙間から湧き出る水を、石で囲っただけのものだった。
リオはそれを記録した。
水源・天然湧水・石囲い・状態良好。
書き終えて、少し迷った。
飲んでみていいか聞こうとしたが、先に先輩が飲んでいた。
「冷たい」
それだけ言った。
村の子供が二人、遠くから見ていた。
リオが振り向くと逃げた。
また戻ってきた。
「何しに来たの」
一人が聞いた。
「道を調べに来ました」
「道?」
「ここへ来る道が、地図に載っていなくて」
子供はきょとんとした。
「地図って何」
リオは少し考えた。
「土地の絵です」
「ここが絵になるの」
「なります」
子供は顔を見合わせた。
それから二人とも笑った。
理由は分からなかった。
でもリオも少し笑った。
地図に載っていない場所が、今日から載る。
それが何を意味するか、子供たちにはまだ分からない。




