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第323話「値段の話」
定期市の帰り道、トゥーは別の商人と連れ立って歩いていた。
名前はバレンといった。
南から来た布商人で、口数が少ない。
「今日は売れましたか」
「まあまあです」
短い返事だった。
しばらく無言で歩く。
橋が見えてきたところで、バレンが口を開いた。
「去年より布の値段が下がってる」
「そうですか」
「ここだけじゃない。街道沿いが全部そうだ」
トゥーは少し考えた。
「道が整備されたからですか」
「多分な」
バレンは橋を渡りながら続けた。
「運ぶのが楽になると、遠くから持ってくる商人が増える。競争が増えると値段が下がる」
悪いことを言っているわけではなかった。
ただ事実を言っていた。
「あなたは困りますか」
「慣れる」
バレンは答えた。
「値段が下がれば、量で勝負する。それだけだ」
橋を渡り終えると、二人は別の道へ分かれた。
トゥーは歩きながら思った。
道が変わると、値段が変わる。
誰かの仕事の仕方まで変わっていく。




