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第322話「古参教官の独り言」
夜、竜舎に一人残っていた。
古参教官のドナルだった。
特に用があったわけではない。
眠れなかっただけだ。
若い竜が一頭、まだ起きていた。
目が合う。
ドナルは近づかなかった。
向こうも逃げなかった。
ただ、そこにいた。
以前ならこういう夜、酒を飲んでいた。
訓練の遅れを数えながら。
怪我をした竜のことを考えながら。
何が悪かったかを繰り返しながら。
今は違う。
竜を見ている。
寝ている竜を。
起きている竜を。
それだけだ。
「お前は運がいい」
ドナルは竜に言った。
竜は瞬きをした。
返事の代わりかどうかは分からない。
「今の時代に生まれて」
昔の第七竜騎団なら、この竜は気性が荒いと判断されていたかもしれない。
今は違う扱いを受けている。
誰かが何かを変えた。
ドナルはそれが誰の影響かを、まだはっきりとは言葉にできなかった。




