第32話:連鎖
最初は、小さな変化だった。
一つの国が降り。
一つの地区が従い。
それだけの話。
だが。
「……増えてるな」
バルガスが呟く。
使者。
また一人。
そしてまた一人。
「次は、どこだ」
「南方の小国」
「その次は?」
「西の三国」
静かに答える。
「……止まらねぇな」
「止まらない」
これはもう。
個別の戦ではない。
流れだ。
「なぜだと思う」
バルガスが問う。
「簡単だ」
「見たからだ」
「……何を」
「結果を」
短く答える。
戦わずに終わる国。
民が残る国。
それが、広がった。
「なら」
「選ぶ」
当然の流れだ。
「……理屈はわかる」
バルガスが頷く。
「だがよ」
「ここまで一気に来るか?」
「来る」
即答する。
「恐怖は広がるのが遅い」
「だが」
「安心は速い」
それだけだ。
「……なるほどな」
バルガスが笑う。
「気持ちいいな、これ」
「そうだな」
否定はしない。
その時だった。
「宰相様!」
兵が駆け込む。
「西方三国、同時に降伏を申し出ています!」
「……来たか」
小さく呟く。
「どうする」
「受ける」
即答。
「条件は?」
「同じだ」
「支配はする」
「だが」
「奪わない」
それが、すべてだ。
そして。
数日後。
地図が変わる。
小国が、減る。
レグナスの領域が、広がる。
「……やべぇな」
バルガスが呟く。
「もう小国じゃねぇぞ、これ」
「まだだ」
首を振る。
「形が変わっただけだ」
中身はまだ追いついていない。
「……だが」
一歩、地図に近づく。
「近いな」
中規模国家。
その領域に。
「……ああ」
バルガスも頷く。
「ここからが本番か」
「ああ」
静かに答える。
小国の時代は終わる。
次は。
本当の意味での戦。
――大陸の戦へ。




