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第320話「橋番の仕事」
橋には番人がいる。
老人のガルスだった。
仕事は簡単だった。
通行者を数える。
壊れた場所があれば報告する。
それだけだ。
だが最近、仕事が増えた。
旅人に道を聞かれる。
「この先に宿はあるか」
「谷へはどう行く」
「荷馬車でも渡れるか」
ガルスは最初、答え方が分からなかった。
番人は数えるだけだと思っていた。
今は違う。
答えると、礼を言われる。
礼を言われると、また来た時に顔を覚えてくれる。
顔を覚えてもらうと、また話しかけられる。
冬に体を壊した時、宿の主人が薬を持ってきた。
「橋番さんが倒れたら困る」
ガルスはその時初めて思った。
自分の仕事は橋を守ることだったが、橋が人を繋いでいた。
だから自分も、少し人を繋いでいた。
今日も誰かが渡っていく。
ガルスは帳面に数字を書き足した。




