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第319話「商人の寄り道」
アルカディアの街道沿いに、小さな市が立っていた。
月に一度の定期市だった。
遠くから来た行商人のトゥーが荷を下ろす。
隣に見知らぬ商人が並んだ。
「初めてですか」
「ここは二度目です」
男は布を広げながら答えた。
「去年来た時より人が多い」
トゥーは周囲を見回した。
確かに多い。
以前この市は半日で終わっていた。
今は夕方まで続く。
「何が変わったんでしょう」
男は少し考えた。
「掲示板、見ましたか」
「庁舎のですか」
「ああ。市の日程が載るようになった」
それだけのことだった。
日程が分かれば、遠くから来られる。
来る者が増えれば、売れる物も増える。
売れれば、また来る。
昼過ぎ。
トゥーの荷が半分減った。
隣の男も笑っている。
大きな話ではなかった。
ただ日程が一枚の紙に載っただけだ。
それだけのことが、ここまで変わる。




