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第318話「飛べない日」
第七竜騎団に、珍しい一日があった。
飛行訓練が全て中止になった。
理由は風だった。
上層の気流が乱れている。
竜が判断する前に、隊長が止めた。
「今日は地上だ」
不満を言う者はいなかった。
以前なら違った。
飛べない日は怠けている日だった。
今は違う。
竜舎では整備が進んでいる。
鱗の点検。
装具の修繕。
飼料の配合見直し。
飛ばない日にしかできないことがある。
若い竜騎兵のセルが手を止めた。
担当竜の爪に、小さなひびが入っていた。
見落としていた。
先輩に報告する。
「よく気付いた」
叱られなかった。
夕方、風が収まった。
明日は飛べるだろう。
セルは竜舎を出ながら思った。
今日飛ばなかったから、明日も飛べる。
そういうことが、少しずつ分かってきた。




