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第317話「谷の入り口」
グランデル谷への道は、午後になっても終わらなかった。
荷馬車が止まる。
御者が振り返る。
「ここから先は歩きです」
道幅が急に狭くなっていた。
両側から木が迫っている。
リオは荷物を担ぎ直した。
重い。
想定より重い。
「書類は置いていけ」
護衛の一人が言った。
「でも記録が」
「帰りに取ればいい」
そういうものか、とリオは思った。
現地へ行くことと記録することは、時々ぶつかる。
一行が歩き始める。
落ち葉が足に絡む。
沢の音が近くなった。
しばらく進んだところで、先輩係官が立ち止まった。
視線の先。
木々の向こうに、煙が見えた。
細い煙だった。
だが確かにある。
誰かが火を焚いている。
リオは地図を取り出した。
何も書かれていない場所に、煙があった。




