308/442
第309話:調査隊の朝
■共同街道局
早朝。
街道にはまだ朝靄が残っていた。
共同街道局の中庭では、小さな調査隊が出発準備を進めている。
目的地はグランデル谷集落。
数日前まで記録すら無かった村だった。
荷馬車へ補給品が積み込まれる。
保存食。
予備燃料。
簡易測量具。
どれも特別な物ではない。
若い係官リオは名簿を確認していた。
文官二名。
護衛三名。
御者一名。
小さな隊だ。
先輩係官が近づく。
「緊張してるな」
「少しだけです」
リオは苦笑した。
実際はかなり緊張している。
地図に無かった場所。
情報の少ない村。
何があるか分からない。
だが行かなければ分からない。
出発の鐘が鳴る。
荷馬車がゆっくり動き出した。
車輪が石畳を踏む音が中庭へ響く。
リオはその後ろ姿を見送った。
地図の余白へ向かう馬車だった。
■最後
知らない場所は不安だった。
だが知らないままにしておく方が、もっと不安だった。
(次話へ)




