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第308話:宿屋の帳簿
■橋の先の宿
夕方。
宿屋の主人は帳簿を開いていた。
宿泊者数。
食料消費。
仕入れ量。
数字が並んでいる。
以前より少し多い。
ほんの少しだ。
だが確実だった。
窓際では旅商人が夕食を取っている。
奥では職人たちが話をしていた。
店の建設は進んでいる。
橋が直り。
宿が埋まり。
人が増える。
その変化は急ではない。
だが止まってもいない。
若い従業員が帳簿を覗く。
「増えてますね」
主人は頷いた。
「少しな」
短い返答。
それで十分だった。
急激な発展は時に壊れる。
だが今の変化は違う。
一歩ずつ。
ゆっくり進んでいる。
夜。
宿の灯りが街道を照らしていた。
遠くから荷馬車が近付いてくる。
今日も誰かが橋を渡ったのだろう。
■最後
橋は人を運ぶ。
人は仕事を運ぶ。
そして仕事は少しずつ暮らしを変えていく。
そんな静かな連鎖が続いていた。
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