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第304話:現地を見る目
■レグナス
執務室。
一つの机が空いていた。
地方視察へ出た官僚の席だった。
最近は珍しくない。
以前なら報告書だけで判断した。
今は違う。
街道を見る。
橋を見る。
宿を見る。
現地で話を聞く。
そのために人を送る。
カイルは空いた机を見ながら言った。
「最近増えましたね」
ヴェルドは書類から目を上げる。
「何がです」
「外へ出る人です」
短い沈黙。
窓の外では馬車が進んでいる。
「報告書は便利です」
ヴェルドが言う。
「ですが紙だけでは分からないこともあります」
橋守りの顔。
宿屋の忙しさ。
村人の空気。
数字にならないものは多い。
夕方。
視察官から報告が届いた。
内容は地味だった。
だが机の上の数字より少し温度があった。
カイルは苦笑する。
「手間ですね」
ヴェルドも頷く。
「ええ」
そして静かに続けた。
「ですが、その手間で見落とさずに済むこともあります」
窓の外では夕日が街道を照らしていた。
■最後
記録は大切だった。
だが現地を見る目もまた、世界を支える一部だった。
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