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第303話:掲示板の前
■アルカディア魔導皇国
昼。
地方庁舎の掲示板の前には数人の住民が立っていた。
議事録。
質問への回答。
支援状況。
以前より貼られる紙は増えている。
だが全員が読むわけではない。
足早に通り過ぎる者もいる。
視線だけ向けて去る者もいる。
若い職員が紙を張り替えながら呟いた。
「思ったほど増えませんね」
上司は笑う。
「そんなものだ」
「もっと大勢が見ると思ってました」
「見ない人もいる」
短い返答。
だが続きがあった。
「それでも見てる人は増えてる」
広場の向こう。
老人が一枚ずつ読んでいた。
若い母親も質問への回答を眺めている。
派手ではない。
劇的でもない。
だが以前には無かった光景だった。
夕方。
リュミエールは利用報告を読む。
増加率は小さい。
だが確実に増えている。
彼女は報告書を閉じた。
「急ぐ必要はありません」
静かな声だった。
「続けることが大切です」
窓の外では風が吹いていた。
掲示板の紙が小さく揺れる。
■最後
変化は大声で訪れない。
気付けば少しずつ増えているものだった。
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