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最強だった俺は、もう戦わないと決めた ―辺境小国の宰相として大陸を制す―  作者: 竜太郎


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第301話:新しい村の名前

■共同街道局


朝。


共同街道局の執務室には、まだ冷たい空気が残っていた。


窓の外では荷馬車がゆっくりと街道を進んでいる。


若い係官のリオは、届いたばかりの報告書の束を整理していた。


橋の補修。


宿の利用状況。


街道の積雪。


見慣れた項目が続く。


その中で一枚だけ手が止まった。


見覚えのない村名だった。


「グランデル谷集落……?」


地図を開く。


載っていない。


索引を探す。


見つからない。


隣の席の先輩係官が覗き込んだ。


「どうした」


「この村です」


報告書を渡す。


先輩も少し眉をひそめた。


「聞いたことがないな」


報告内容は短い。


山道の損傷。


補給不足。


人口推定二百名。


それだけだった。


「記録は?」


「ありません」


短い沈黙。


やがて先輩が言う。


「なら調べるしかない」


昼。


地図の隅に小さな印が加えられた。


たった一つの点。


それだけだ。


だが、知られていなかった場所が一つ記録された。


執務室へ差し込む陽光の中で、若い係官はその印をしばらく眺めていた。


■最後


世界は広かった。


知られている場所より、知られていない場所の方がまだ多い。


だから今日も新しい報告が届いていた。


(次話へ)


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