第30話:理解できないもの
統合は、順調だった。
エルド。
ガレス。
小国は、次々と取り込まれていく。
戦はない。
血も流れない。
だが。
「……おかしい」
小さく呟く。
「何がだ?」
バルガスが問う。
「静かすぎる」
短く答える。
「恐怖が、残っている」
「……ああ」
バルガスも頷く。
「従ってはいる」
「だが」
「納得はしていない」
それが問題だ。
その時だった。
「報告!」
兵が駆け込む。
「エルド地区にて反乱発生!」
「……来たか」
静かに呟く。
「規模は?」
「百ほど」
「武装あり」
「理由は」
一拍。
「……不明」
わずかに、目を細める。
「行くぞ」
現地。
人が集まっている。
怒号。
混乱。
「止まれ」
声を落とす。
ざわめきが止まる。
「……お前が宰相か」
一人の男が前に出る。
震えている。
だが。
目は逸らさない。
「そうだ」
「……なぜだ」
絞り出すような声。
「なぜ、戦わない」
沈黙。
「……何?」
「俺たちは、戦う覚悟をした」
「死ぬ覚悟もした」
「なのに」
「お前は、何もせずに奪った」
震えている。
怒りではない。
「理解できないんだよ」
その言葉。
「お前が」
空気が、止まる。
「戦わずに勝つとか」
「人を殺さずに支配するとか」
「そんなの、ありえない」
声が揺れる。
「だから怖いんだよ」
沈黙。
すべて、理解した。
「……そうか」
短く呟く。
恐怖。
それが原因だ。
「どうする」
バルガスが低く問う。
処刑すれば、簡単だ。
だが。
「解散しろ」
静かに言う。
「……は?」
「武器を捨てろ」
「それで終わりだ」
沈黙。
「……信用できるか」
「しなくていい」
即答する。
「だが」
「今ここで戦えば」
「全員死ぬ」
現実。
「……」
男の手が震える。
そして。
武器が、落ちる。
「……解散しろ」
小さく言う。
人が散っていく。
「……いいのか」
バルガスが問う。
「ああ」
「これは、戦じゃない」
「慣れの問題だ」
理解されない。
それでいい。
時間がかかるだけだ。
「……変な奴だな」
「そうか」
否定はしない。
理解されなくてもいい。
結果で示す。
それだけだ。




