第28話:最初の国
国境を越えた先。
小さな城が見えた。
――エルド小国。
レグナスよりもさらに小さい。
兵も少ない。
資源も乏しい。
だが。
「……逃げないか」
バルガスが呟く。
城門は閉じている。
だが、兵は配置されている。
戦う気だ。
「当然だ」
静かに答える。
「ここで引けば、終わる」
それくらいは理解している。
「で、どうする」
バルガスが問う。
「攻めるか?」
「しない」
即答。
「……またか」
「戦う必要がない」
視線を城へ向ける。
「開けろ」
短く言う。
「……は?」
「門を開けろ」
「今すぐ」
沈黙。
「……そんなので開くわけ――」
その時だった。
城門の上。
「……誰だ」
声が落ちる。
「レグナス王国、宰相カインだ」
淡々と名乗る。
「話をしに来た」
沈黙。
「……話?」
「ああ」
「降伏の話だ」
空気が、凍る。
「……ふざけるな!」
怒声。
「戦いもせずに降伏など――」
「三日」
言葉を遮る。
「何だと」
「三日以内に」
「この国は落ちる」
静かな断定。
「……何を根拠に」
「補給だ」
即答。
「今の備蓄」
「兵の配置」
「内部の不満」
「すべて見えている」
沈黙。
誰も、反論できない。
「戦えば」
「民が死ぬ」
「国も終わる」
一拍。
「降伏すれば」
「残る」
それだけの話だ。
「……」
城門の上。
揺れている。
理解している。
現実を。
「……証明は?」
絞り出すような声。
「いらない」
即答。
「三日後にわかる」
沈黙。
長い。
だが。
――やがて。
「……開けろ」
小さな声。
城門が、ゆっくりと開く。
「……まじかよ」
バルガスが呟く。
「戦わずに……」
「ああ」
短く答える。
これが。
支配だ。
「次だ」
歩き出す。
一つ。
また一つ。
小国は、まとめられていく。
戦わずに。




