第26話:二日目
朝。
霧が、薄く平原を覆っていた。
「……来るな」
空気が違う。
一日目とは、明らかに違う。
「何がだ」
バルガスが問う。
「決めに来る」
短く答える。
「昨日で見切られた」
「なら」
「今日は動く」
その通りだった。
ヴァルハイト軍。
整った陣形のまま。
前進を始める。
「……来たな」
バルガスが剣を握る。
「どうする」
「予定通りだ」
静かに言う。
「左翼を下げろ」
「……は?」
「わざと崩す」
空気が止まる。
「おい、それは――」
「いいからやれ」
短く命じる。
レグナス軍、左翼が後退する。
「……見えるぞ」
バルガスが低く言う。
「完全に隙だ」
その瞬間。
ヴァルハイト軍が動いた。
迷いなく。
左翼へと集中する。
「……乗ったな」
小さく呟く。
「合理的だ」
「崩れている場所を叩く」
「間違っていない」
だからこそ。
「読める」
「今だ」
合図。
中央が動く。
そして。
右翼も。
包み込む。
「……っ!」
ヴァルハイト側の動きが、一瞬止まる。
だが。
遅い。
すでに、挟まれている。
「撤退路は?」
「塞いだ」
静かに答える。
完全包囲。
「……終わりだ」
小さく呟く。
戦は、一気に傾く。
ヴァルハイト軍は崩れない。
だが。
動けない。
「……見事だ」
敵側の指揮官が、静かに言う。
「我々の“合理”を逆手に取ったか」
完全に理解している。
「だが」
一歩、下がる。
「ここで終わるつもりはない」
「終わりだ」
遮る。
「これ以上やれば」
「損害が出る」
「意味がない」
静かな声。
「……なるほど」
男は、わずかに笑う。
「確かに」
「これは“戦”ではない」
「確認だったな」
剣を下ろす。
「撤退する」
その言葉。
勝敗が、決まった。
だが。
完全勝利ではない。
それでいい。
「……終わったな」
バルガスが息を吐く。
「ああ」
短く答える。
中規模国家。
確かに強い。
だが。
崩せる。
それが、証明された。
「……次だな」
バルガスが言う。
「ああ」
視線を遠くへ向ける。
まだ、終わらない。
これは。
始まりに過ぎない。




