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第24話:接触

 使者が来たのは、昼だった。


 


 王城の謁見の間。


 


 重い空気が流れている。


 


 


「……中規模国家、ヴァルハイト連合よりの使者」


 


 


 名が告げられる。


 


 


 その瞬間。


 


 


 場の空気が変わった。


 


 


 帝国とは違う。


 


 


 “格”の違い。


 


 


 


「通せ」


 


 


 王が言う。


 


 


 


 扉が開く。


 


 


 


 入ってきたのは、一人の男。


 


 


 軽装。


 


 武装も最小限。


 


 


 だが。


 


 


 隙がない。


 


 


 


「……レグナス王」


 


 


 軽く頭を下げる。


 


 


「ヴァルハイト連合より参りました」


 


 


 


 声は穏やか。


 


 


 だが。


 


 


 その背後にあるものは、重い。


 


 


 


「用件は」


 


 


 王が問う。


 


 


 


「単純です」


 


 


 


 男は、わずかに笑う。


 


 


 


「確認に来ました」


 


 


 


「何をだ」


 


 


 


 一拍。


 


 


 


「貴国が、“危険かどうか”を」


 


 


 


 沈黙。


 


 


 


 遠回しな言い方ではない。


 


 


 


 完全な、本音。


 


 


 


 


「……どういう意味だ」


 


 


 バルガスが低く言う。


 


 


 


「そのままの意味です」


 


 


 


「帝国を止めた小国」


 


 


 


「それは、無視できない」


 


 


 


 


 静かな圧。


 


 


 


 だが。


 


 


 


 威圧ではない。


 


 


 


 “判断”だ。


 


 


 


 


「で」


 


 


 


 男の視線が、こちらに向く。


 


 


 


「あなたが、宰相カインですね」


 


 


 


「ああ」


 


 


 


 短く答える。


 


 


 


 


「聞いています」


 


 


 


「戦わずに勝つ、と」


 


 


 


 


「事実だ」


 


 


 


 


 沈黙。


 


 


 


 


 男は、少しだけ考え。


 


 


 


 


 


「では、一つ」


 


 


 


 


 


「試させていただきます」


 


 


 


 


 


 空気が変わる。


 


 


 


 


 


「……試すだと?」


 


 


 


 バルガスが眉をひそめる。


 


 


 


 


 


「はい」


 


 


 


 


 


「我々と、一つだけ」


 


 


 


 


 


「小さな戦を」


 


 


 


 


 


 


 その言葉。


 


 


 


 


 


 完全に、挑発だった。


 


 


 


 


 


 


「受ける必要はない」


 


 


 


 


 


 バルガスが言う。


 


 


 


 


 


 


「これは罠だ」


 


 


 


 


 


 


「そうだな」


 


 


 


 


 


 


 同意する。


 


 


 


 


 


 


 罠だ。


 


 


 


 


 


 


 だが。


 


 


 


 


 


 


 


「受ける」


 


 


 


 


 


 


 


「……は?」


 


 


 


 


 


 


 


「カイン」


 


 


 


 


 


 


 


 


「問題ない」


 


 


 


 


 


 


 


 


 静かに言う。


 


 


 


 


 


 


 


 


「相手は中規模国家だ」


 


 


 


 


 


 


 


 


「ここで避ければ」


 


 


 


 


 


 


 


 


「舐められる」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 それは、許容できない。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「……なるほど」


 


 


 


 


 


 


 


 男が、小さく笑う。


 


 


 


 


 


 


 


 


「では」


 


 


 


 


 


 


 


 


「条件を」


 


 


 


 


 


 


 


 


「兵は千」


 


 


 


 


 


 


 


「期間は三日」


 


 


 


 


 


 


 


「場所は、この平原」


 


 


 


 


 


 


 


 


 地図が広げられる。


 


 


 


 


 


 


 


 


「勝敗は」


 


 


 


 


 


 


 


 


「どちらかが退いた時点で決定」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「いいだろう」


 


 


 


 


 


 


 


 


 即答する。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 沈黙。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「……本当に受けるのか」


 


 


 


 


 


 


 


 バルガスが低く問う。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「ああ」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「ただし」


 


 


 


 


 


 


 


 


 一拍。


 


 


 


 


 


 


 


 


「潰さない」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「……何?」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「これは“戦”じゃない」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「確認だ」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「なら」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「勝てばいい」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「終わらせる必要はない」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 静かな声。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 だが。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 それは。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 完全に“上”の視点だった。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「……面白い」


 


 


 


 


 


 


 


 男が笑う。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「では」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「三日後に」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 そう言って。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 去っていく。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 扉が閉まる。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「……とんでもないな」


 


 


 


 


 


 


 


 バルガスが呟く。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「中規模国家が、直接来るとは」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「ああ」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 小さく頷く。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 戦は、次の段階へ入った。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 小国の戦ではない。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 大陸の戦。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 だが。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「問題ない」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 同じことを繰り返す。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 戦わない。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 それで勝つ。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 相手が誰でも。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 関係ない。



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