第23話:見ている者たち
朝。
城下町は、いつもと同じように始まった。
店が開き、人が動く。
だが。
完全に同じではない。
――見ている。
あちこちから、視線を感じる。
「……来てるな」
小さく呟く。
「何がだ?」
隣のバルガスが問う。
「変化だ」
歩きながら答える。
「不安は消えていない」
「だが」
「止まっている」
噂はまだある。
だが、広がってはいない。
「……あの時のか」
バルガスが呟く。
市場でのやり取り。
あれが、少しだけ効いている。
「ねぇ」
声。
振り向く。
ルナだった。
「今日も見に来たの?」
「ああ」
「変化は、現場に出る」
それだけだ。
「……ほんと、変な人」
ルナは小さく笑う。
その時だった。
「宰相様!」
声が上がる。
人だ。
一人、また一人と。
こちらに視線が集まる。
「……なんだ」
「昨日のこと、聞きました!」
若い男が言う。
「帝国を退けたって……!」
「……事実だ」
「本当に、守れるんですか」
同じ問い。
だが。
前とは違う。
「守る」
短く答える。
沈黙。
そして。
「……じゃあ」
男が、少しだけ息を吸う。
「信じます」
空気が、揺れる。
「……そうか」
それだけを返す。
無理に返す必要はない。
「俺もだ」
「俺も」
声が増える。
少しずつ。
確実に。
「……変わってきたな」
バルガスが呟く。
「ああ」
「結果が出たからだ」
それだけの話だ。
だが。
「……違うよ」
ルナが、小さく言う。
「ちゃんと、見てたからだよ」
その言葉。
少しだけ、目を細める。
民は、見ている。
言葉ではなく。
行動を。
「……そうかもしれないな」
小さく答える。
その時だった。
「報告!」
兵が駆け込む。
「北方より使者!」
「中規模国家より、接触あり!」
空気が、変わる。
「……来たか」
小さく呟く。
次の段階。
戦は、広がる。
小国の戦から。
大陸の戦へ。
だが。
「問題ない」
短く言う。
やることは同じだ。
戦わない。
それで終わらせる。




