第22話:本命
帝国軍議室。
空気が、張り詰めていた。
これまでとは違う。
軽さはない。
試しも終わった。
「……報告は以上です」
沈黙。
誰も口を開かない。
「……ここまでか」
ガルドが、低く呟く。
「想定以上だ」
「小国一つに、ここまでやられるとはな」
苛立ちはない。
ただ。
事実を認めている。
「だが」
一拍。
「ここから先は、別だ」
その言葉と同時に。
扉が、開いた。
重く。
ゆっくりと。
足音が響く。
一歩。
また一歩。
その場の空気が、変わる。
誰も、言葉を発しない。
ただ一人。
入ってきた男を見ていた。
「……遅い」
低い声。
感情はない。
「申し訳ありません」
ガルドが、わずかに頭を下げる。
その姿に。
周囲の者が、息を呑む。
――あり得ない。
あのガルドが。
頭を下げている。
「状況は聞いた」
男が言う。
「小国一つに、手間取っているらしいな」
事実。
だが。
その言葉には、わずかな“失望”が混じっていた。
「……宰相が異常です」
ガルドが答える。
「戦わずに、すべてを崩してくる」
「読めない」
「だから時間がかかっています」
男は、少しだけ考え。
「名は」
「カイン」
その名前が、落ちる。
「……そうか」
わずかに。
ほんのわずかに。
興味を示した。
「ならば」
一歩、前に出る。
「私が行く」
空気が凍る。
「……閣下自ら、ですか」
「ああ」
「ここからは、無駄が多い」
「整理する」
静かな声。
だが。
それは。
“終わり”を意味していた。
「対象は」
「宰相カイン」
「それ以外は不要だ」
その言葉。
完全な合理。
完全な冷酷。
「……了解しました」
ガルドが、静かに頷く。
戦が、変わる。
今度こそ。
本当の意味で。
一方。
レグナス王国。
「……来たな」
窓の外を見ながら、呟く。
空気が違う。
今までとは、明らかに違う。
「今までのとは、別だ」
「……そんなにか」
バルガスが問う。
「ああ」
「一つ間違えれば」
「終わる」
静かな断定。
だが。
「問題ない」
小さく呟く。
「やることは同じだ」
戦わない。
それで終わらせる。
相手が誰でも。
関係ない。




