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第21話:作られた怪物

夜は、静かだった。


 


 城の一室。


 


 灯りは一つ。


 


 書類は開かれているが、視線はそこにない。


 


 


「……眠れないの?」


 


 


 声。


 


 


 振り向く。


 


 


 ルナが立っていた。


 


 


「……少しな」


 


 


 短く答える。


 


 


 


「最近、ずっとそうだよね」


 


 


 


「そうかもしれないな」


 


 


 


 否定はしない。


 


 


 


 理由は、わかっている。


 


 


 


 ――帝国。


 


 


 


 その存在が、近づいている。


 


 


 


 だから。


 


 


 


「ねぇ」


 


 


 


 ルナが、少しだけ間を置いて言う。


 


 


 


「帝国ってさ」


 


 


 


 


「カインと関係あるの?」


 


 


 


 


 沈黙。


 


 


 


 


 隠す意味はない。


 


 


 


 


「ある」


 


 


 


 


 短く答える。


 


 


 


 


「俺が、あれを作った」


 


 


 


 


 ルナの目が、わずかに見開かれる。


 


 


 


 


「……どういうこと?」


 


 


 


 


 


「昔」


 


 


 


 


 


 言葉を選ぶ。


 


 


 


 


 


「帝国は、今ほど強くなかった」


 


 


 


 


 


「周辺国に押されていた」


 


 


 


 


 


 


「そこに」


 


 


 


 


 


 


「依頼が来た」


 


 


 


 


 


 


「防衛戦の指揮」


 


 


 


 


 


 


「……カインが?」


 


 


 


 


 


 


「ああ」


 


 


 


 


 


 


 


 それだけの話だ。


 


 


 


 


 


 


 だが。


 


 


 


 


 


 


「結果は?」


 


 


 


 


 


 


「勝った」


 


 


 


 


 


 


 


 当然のように言う。


 


 


 


 


 


 


 だが。


 


 


 


 


 


 


「ただの勝利じゃない」


 


 


 


 


 


 


 


 目を細める。


 


 


 


 


 


 


 


「徹底的に潰した」


 


 


 


 


 


 


 


「補給を断ち」


 


 


 


 


 


 


「逃げ道を塞ぎ」


 


 


 


 


 


 


「内部を崩し」


 


 


 


 


 


 


 


「……終わらせた」


 


 


 


 


 


 


 


 短い言葉。


 


 


 


 


 


 


 だが。


 


 


 


 


 


 


 その意味は、重い。


 


 


 


 


 


 


 


「それで」


 


 


 


 


 


 


 


「帝国は、生き残った」


 


 


 


 


 


 


 


「周囲の国は崩れた」


 


 


 


 


 


 


 


 


「そして」


 


 


 


 


 


 


 


 一拍。


 


 


 


 


 


 


 


 


「帝国が、残った」


 


 


 


 


 


 


 


 


 静寂。


 


 


 


 


 


 


 


 


「……それって」


 


 


 


 


 


 


 


 


 ルナが、ゆっくりと言う。


 


 


 


 


 


 


 


 


「カインが強くしたってこと?」


 


 


 


 


 


 


 


 


「ああ」


 


 


 


 


 


 


 


 


「結果的にはな」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 否定はしない。


 


 


 


 


 


 


 


 


 事実だからだ。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「……じゃあ」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「今の帝国って」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「カインが――」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「関係ある」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 言葉を遮る。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「少なくとも」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「無関係じゃない」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 それが、答えだった。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 沈黙。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 重い。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 だが。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「……後悔してるの?」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 ルナが、静かに問う。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「している」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 即答だった。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「必要だったとは思っている」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「だが」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「正しかったとは思っていない」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 それが、本音だ。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「……そっか」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 ルナは、小さく頷く。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「じゃあさ」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 一歩、近づく。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「今はどうするの?」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 まっすぐな目。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「壊す」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 短く答える。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「帝国を?」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「ああ」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「俺が作ったなら」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「俺が終わらせる」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 それが責任だ。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「……一人で?」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「戦わずに」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 答える。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 迷いはない。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「……ほんと、変な人」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 ルナは、小さく笑った。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 そして。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「でも」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「それでいいと思う」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 その一言。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「終わらせて」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「ちゃんと」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 静かな声。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 それが。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 答えだった。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 ――過去は消えない。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 だが。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 終わらせることはできる。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 今なら。


 


 


 


 


 


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