第20話:剣の理由
前線は、静かだった。
戦は終わった。
だが。
終わりきってはいない。
「……まだ来るな」
レオンは、剣を肩に担ぎながら呟いた。
空気が違う。
あの一戦で終わる相手ではない。
それは、わかっている。
「来るなら来い」
口の端を上げる。
その目に、迷いはない。
その時。
風が、揺れた。
次の瞬間。
影が、飛び出す。
「――っ!」
反射で剣を振る。
金属音。
火花が散る。
「……ちっ」
距離を取る。
相手は一人。
だが。
空気が違う。
「……精鋭か」
低く呟く。
帝国の兵。
だが。
今までとは違う。
無駄がない。
動きが洗練されている。
「いいね」
レオンは、笑った。
「やっとまともなのが来た」
踏み込む。
剣を振る。
速い。
だが。
止められる。
反撃。
紙一重で避ける。
「……はは」
楽しい。
体が、理解している。
これは。
本物だ。
「お前らさ」
剣を構えながら、言う。
「なんで戦う?」
相手は答えない。
当然だ。
「まぁいいか」
踏み込む。
剣がぶつかる。
何度も。
何度も。
だが。
少しずつ。
押している。
「……なるほどな」
呟く。
「完成されてる」
「でも」
一歩踏み込む。
「それだけだ」
剣が、深く入る。
相手の動きが止まる。
そのまま。
一閃。
勝負は、決まった。
血が落ちる。
静寂。
「……悪くなかった」
剣を払う。
だが。
「――まだだ!」
別の声。
振り向く。
複数。
「……はは」
笑う。
「いいね」
剣を握る。
「まとめて来いよ」
踏み込む。
戦いが、始まる。
斬る。
避ける。
踏み込む。
ただ、それだけ。
だが。
それが、すべてだった。
数分後。
すべてが、終わる。
立っているのは、一人。
「……ふぅ」
息を吐く。
そして。
空を見上げる。
「やっぱ、戦うのは楽しいな」
小さく呟く。
その時。
「……変わらないね」
声。
エリナだった。
「そりゃな」
「俺は、これしかできねぇ」
「違うでしょ」
静かに言う。
「それを選んでるだけ」
レオンは、少しだけ笑った。
「まぁな」
「でもさ」
一瞬、真面目な顔になる。
「カインは違う」
「……うん」
「戦わねぇで、全部やる」
「意味わかんねぇよな」
笑う。
だが。
「でも」
剣を肩に担ぐ。
「だから任せられる」
それが、答えだった。
戦う者と。
戦わない者。
その違いが。
今の、この国を支えている。




