第140話:壊して進む国
■他視点:ドラグナール竜騎帝国・前線上空
竜が飛ぶ。
重い羽音。
空気を震わせながら。
前線の上を通過していく。
地上では。
兵たちが止まっていた。
停止。
三拍。
血。
だが。
空の竜騎兵たちは。
誰も止まらない。
■竜騎兵
「前進!」
怒号。
炎。
爆音。
地上を焼き払う。
「止まる前に壊せ!」
それが。
ドラグナールの答えだった。
■ドラグナール竜騎帝国・軍議
「停止現象継続」
報告。
だが。
帝国将軍は笑う。
「なら止まる前に進め」
一拍。
「結果が先なら」
「結果ごと押し潰せ」
誰も否定しない。
ドラグナールは。
最初から。
理屈より暴力だった。
■思想
壊れる?
関係ない。
死ぬ?
関係ない。
戦えるなら進む。
それだけ。
だから。
現象との相性が最悪だった。
■前線
竜騎兵が突撃する。
停止。
血。
それでも。
前へ出る。
別の竜騎兵が落ちる。
さらに進む。
「進めぇ!!」
叫び。
炎。
爆風。
地上そのものが抉れる。
■一般兵
「……狂ってる」
誰かが呟く。
だが。
ドラグナール兵は笑っていた。
恐怖ではない。
高揚。
破壊。
戦場に酔っている。
■結果
前進速度。
維持。
停止現象。
継続。
死傷率。
異常。
だが。
ドラグナールは止まらない。
■グランヴェルド工業連邦
「人的損耗率が高すぎる」
技術官が眉をひそめる。
「非効率」
一拍。
「だが前進している」
沈黙。
それが問題だった。
壊れながら。
本当に進んでいる。
■アルカディア魔導皇国
「……現象を力で押している?」
観測官が呟く。
「あり得ません」
別の観測官が否定する。
「理論上」
一拍。
「そんなことは」
言葉が止まる。
前線映像。
そこには。
確かに。
進んでいるドラグナールがいた。
■セラフィス神聖教国
「最も危険です」
司祭が静かに言う。
「恐怖を拒絶している」
一拍。
「壊れることすら前提」
沈黙。
だから。
止まらない。
■ノルヴァン公国
「……何なんだあの国は」
副官が呟く。
ロイドは地図を見る。
ドラグナール戦線だけ。
前へ進んでいた。
被害は壊滅的。
だが。
止まらない。
「現象への適応ではない」
ロイドが言う。
「現象ごと踏み潰して進んでいる」
誰も返答できない。
理解不能だった。
■ヴァルハイン
「……あれは戦争だな」
レオナルトが苦く笑う。
参謀が静かに返す。
「正常ではありません」
「分かってる」
一拍。
「でも、あれだけはまだ戦争をしてる」
沈黙。
確かに。
ドラグナールだけは。
まだ“戦い”を成立させていた。
力で。
無理やり。
■レグナス(上層)
「外部」
ミレアが報告する。
「ドラグナール、強行前進継続」
カイルが顔を引きつらせる。
「……止まらないんですか」
ヴェルドは静かに言う。
「止まらない」
一拍。
「止まる理由がないからだ」
「でも壊れてますよね」
ヴェルドは頷く。
「当然だ」
「だが」
少しだけ目を細める。
「4大国で最初に盤面を壊すなら」
一拍。
「ドラグナールだ」
■ルナたち
「……怖い」
エリナが小さく言う。
ルナは静かに前を見る。
「うん」
「でもドラグナールは止まらない」
レオンが笑う。
「壊れるの前提だからな」
ルナは小さく頷く。
「だから危ない」
■最後
ドラグナール竜騎帝国は。
進み続けていた。
止まりながら。
血を流しながら。
壊れながら。
それでも。
前へ。
世界が恐怖で止まる中。
ただ一つ。
暴力だけで。
現象を押し潰そうとしていた。
(次話へ)




