表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
138/148

第138話:観測限界

■他視点:アルカディア魔導皇国・深層観測塔


 


「……またズレました」


 


 


観測士が言う。


 


 


巨大な観測陣。


 


 


数百枚の術式盤。


 


 


記録。


 


 


因果。


 


 


時間。


 


 


全てを固定している。


 


 


はずだった。


 


 


■観測結果


 


「前線記録と一致しません」


 


 


別の観測士が報告する。


 


 


「被害発生時刻が前後しています」


 


 


一拍。


 


 


「原因行動も一致しません」


 


 


沈黙。


 


 


アルカディアは。


 


理論国家だった。


 


 


だからこそ。


 


今の状況は致命的だった。


 


 


理論で繋がらない。


 


 


■深層観測室


 


「……もう一度」


 


 


観測長が言う。


 


 


記録を再生。


 


 


兵が歩く。


 


 


停止。


 


 


三拍。


 


 


血。


 


 


だが。


 


別記録では。


 


 


血が先。


 


 


停止が後。


 


 


さらに別記録では。


 


 


停止そのものが存在しない。


 


 


「何だこれは」


 


 


誰かが呟く。


 


 


返答はない。


 


 


■観測騎士団


 


「再現しますか」


 


 


騎士が言う。


 


 


観測長は黙る。


 


 


再現。


 


 


つまり。


 


現象を人工的に近づける。


 


 


以前。


 


一度試した。


 


 


結果。


 


観測騎士団は。


 


撤退した。


 


 


■記録


 


「観測不能」


 


 


「因果不成立」


 


 


「記録固定失敗」


 


 


「観測者側に逆流」


 


 


短い文章。


 


 


だが。


 


それだけで十分だった。


 


 


■観測長


 


「……駄目だ」


 


 


低い声。


 


 


「近づきすぎる」


 


 


一拍。


 


 


「今のアルカディアでは耐えられない」


 


 


誰も反論しない。


 


 


観測騎士団ですら。


 


届かなかった。


 


 


■グランヴェルド工業連邦


 


「観測失敗?」


 


 


技術官が眉をひそめる。


 


 


「アルカディアでもか」


 


 


一拍。


 


 


「なら測定不能として処理」


 


 


合理的。


 


 


だが。


 


その合理性すら。


 


揺らぎ始めていた。


 


 


■ドラグナール竜騎帝国


 


「観測など不要」


 


 


低い笑い。


 


 


「壊せば分かる」


 


 


一拍。


 


 


「壊れないなら」


 


 


「さらに壊すだけだ」


 


 


変わらない。


 


 


だからこそ。


 


恐ろしい。


 


 


■セラフィス神聖教国


 


「……観測してはいけない」


 


 


司祭が静かに言う。


 


 


「見た時点で」


 


 


一拍。


 


 


「近づく」


 


 


空気が冷える。


 


 


それは。


 


宗教的恐怖だった。


 


 


■ノルヴァン公国


 


「アルカディアが引いた?」


 


 


ロイドが目を細める。


 


 


報告書。


 


 


そこには。


 


観測縮小。


 


深層観測停止。


 


 


そう書かれていた。


 


 


「……本気で危険なのか」


 


 


副官が呟く。


 


 


ロイドは少し考える。


 


 


そして。


 


静かに言う。


 


 


「違う」


 


 


一拍。


 


 


「危険では済まない」


 


 


■ヴァルハイン


 


「観測騎士団が退くか」


 


 


レオナルトが地図を見る。


 


 


「なら」


 


 


参謀が言う。


 


 


「世界はもう理解不能領域です」


 


 


沈黙。


 


 


否定できない。


 


 


■レグナス(上層)


 


「外部」


 


 


ミレアが報告する。


 


 


「アルカディア、深層観測縮小」


 


 


カイルが固まる。


 


 


「……観測騎士団ですよね?」


 


 


ヴェルドが頷く。


 


 


「最も近づいた」


 


 


一拍。


 


 


「だから最初に退いた」


 


 


「……なんでです」


 


 


ヴェルドは短く答える。


 


 


「見えたからだ」


 


 


■ルナたち


 


「……怖いね」


 


 


エリナが言う。


 


 


ルナは静かに頷く。


 


 


「うん」


 


 


「分かる人ほど怖いんだと思う」


 


 


レオンが笑う。


 


 


「分からない方が幸せか」


 


 


ルナは少し考える。


 


 


そして。


 


小さく言う。


 


 


「……どうだろうね」


 


 


■最後


 


アルカディア魔導皇国は。


 


観測を縮小した。


 


 


理解を諦めたわけではない。


 


 


だが。


 


理解し続ければ。


 


壊れると知った。


 


 


観測騎士団ですら。


 


届かなかった。


 


 


その事実が。


 


静かに。


 


世界を震わせ始めていた。


 


 


(次話へ)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ