第136話:継続国家
■他視点:エルドリア王国・前線司令部
「……まだ続けるのか」
副官が呟く。
前線地図。
赤線は崩れ。
青線は消え。
もはや。
戦況図として成立していない。
それでも。
軍は存在していた。
「継続する」
ガレスが言う。
即答だった。
「理由は」
誰かが問う。
ガレスは少しだけ黙る。
「止めた結果を見た」
一拍。
「リューベル王国を見ただろう」
空気が重くなる。
■認識
リューベル王国は。
生き残った。
だが。
国家として壊れた。
ならば。
戦争を続けるしかない。
それが。
エルドリア王国の結論だった。
■前線
「前進」
命令。
兵が動く。
止まる。
三拍。
血。
もう。
誰も反応しない。
「……慣れてきたな」
兵士が小さく言う。
隣の兵も頷く。
「怖がるの疲れた」
短い返答。
感情が摩耗している。
だが。
まだ戦争を捨ててはいない。
■ノルヴァン公国
「エルドリア王国は継続を選択」
ロイドが資料を見る。
副官が静かに言う。
「合理的です」
「……ああ」
ロイドも頷く。
「国家としては正しい」
一拍。
「だが人間として壊れる」
沈黙。
どちらを選んでも。
壊れる。
それが現実だった。
■グランヴェルド工業連邦
「精神摩耗率上昇」
技術官が報告する。
「だが軍機能維持」
一拍。
「継続可能」
判断は早い。
「ならば問題なし」
切り捨てる。
兵の精神より。
国家機能。
それがグランヴェルドだった。
■アルカディア魔導皇国
「……適応し始めている」
観測官が言う。
記録映像。
兵たちは。
現象に驚かない。
恐怖しない。
受け入れている。
「危険です」
誰かが呟く。
「正常化している」
一拍。
「異常を」
空気が冷える。
■ドラグナール竜騎帝国
「それでいい」
低い笑い。
「恐怖を超えれば戦える」
一拍。
「なら問題ない」
ドラグナールは。
壊れることを恐れていなかった。
だから。
最も危険だった。
■セラフィス神聖教国
「……慣れは腐敗です」
司祭が静かに言う。
「恐怖を失うのではない」
一拍。
「恐怖を感じる機能が壊れる」
誰も反論しない。
できなかった。
■ヴァルハイン
「継続国家が出たか」
レオナルトが地図を見る。
リューベル王国。
空白地帯。
エルドリア王国。
継続国家。
道が分かれ始めていた。
「どちらも終わっているな」
参謀が小さく言う。
レオナルトは否定しない。
■レグナス(上層)
「外部」
ミレアが報告する。
「エルドリア王国、継続方針固定」
カイルが顔をしかめる。
「……慣れてますね」
ヴェルドが頷く。
「適応だ」
一拍。
「だが健全ではない」
■ルナたち
「……分かれてきたね」
エリナが言う。
ルナは静かに頷く。
「うん」
「捨てる国と」
一拍。
「壊れながら続ける国」
レオンが笑う。
「どっちも地獄だな」
ルナは否定しない。
■最後
世界は。
二つに分かれ始めた。
戦争を捨てる国。
壊れながら戦い続ける国。
どちらも。
正常ではない。
だが。
もう。
元には戻れなかった。
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