表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
135/152

第135話:空白地帯

■他視点:ノルヴァン公国・国境監視隊


 


「……静かすぎる」


 


 


監視兵が呟く。


 


 


目の前には。


 


リューベル王国旧戦線。


 


 


かつて。


 


数万規模の軍勢がいた場所。


 


 


今は。


 


何もない。


 


 


死体も少ない。


 


 


戦闘跡も薄い。


 


 


ただ。


 


武器だけが落ちている。


 


 


「本当に戦争してたのか?」


 


 


誰かが言う。


 


 


答える者はいない。


 


 


記録上では。


 


確かに存在した。


 


 


だが。


 


現実感がない。


 


 


■監視報告


 


「リューベル王国軍との接触なし」


 


 


「敵影なし」


 


 


「交戦なし」


 


 


一拍。


 


 


「……住民反応も薄い」


 


 


隊長が顔を上げる。


 


 


「どういう意味だ」


 


 


「戦争の話をしません」


 


 


沈黙。


 


 


「避けてるのか?」


 


 


「違います」


 


 


一拍。


 


 


「興味を失っています」


 


 


空気が重くなる。


 


 


■リューベル王国・地方都市


 


市場は開いている。


 


 


人もいる。


 


 


生活もある。


 


 


だが。


 


妙に静かだった。


 


 


「前線は?」


 


 


旅人が聞く。


 


 


店主は少し考える。


 


 


「……あったな」


 


 


短い返答。


 


 


感情がない。


 


 


恐怖も。


 


怒りも。


 


ない。


 


 


「家族は?」


 


 


「戻ってない」


 


 


一拍。


 


 


「そうか」


 


 


会話が終わる。


 


 


誰も続きを話さない。


 


 


■ノルヴァン公国


 


「感情反応が薄い?」


 


 


ロイドが資料を見る。


 


 


「はい」


 


 


副官が頷く。


 


 


「戦争に対する執着が消えています」


 


 


一拍。


 


 


「まるで」


 


 


言葉を止める。


 


 


ロイドが続きを言う。


 


 


「戦争そのものを切り離したか」


 


 


沈黙。


 


 


それは。


 


理解に近い。


 


 


だが。


 


同時に危険だった。


 


 


■エルドリア王国


 


「感情を失った?」


 


 


ガレスが眉をひそめる。


 


 


「そこまでして離脱する価値があるのか」


 


 


誰も答えない。


 


 


だが。


 


前線を維持している国も。


 


既に壊れ始めている。


 


 


どちらも地獄だった。


 


 


■グランヴェルド工業連邦


 


「非合理的」


 


 


技術官が切り捨てる。


 


 


「国家維持能力が著しく低下」


 


 


一拍。


 


 


「存続効率なし」


 


 


それだけ。


 


 


だが。


 


誰も安心していない。


 


 


■アルカディア魔導皇国


 


「……空白化している」


 


 


観測官が言う。


 


 


「戦争への認識だけが抜け落ちている」


 


 


一拍。


 


 


「だから現象から外れた?」


 


 


「可能性は高い」


 


 


だが。


 


試せない。


 


 


試した時点で。


 


国家が終わる。


 


 


■ドラグナール竜騎帝国


 


「弱い」


 


 


低い声。


 


 


「捨てた時点で敗北だ」


 


 


一拍。


 


 


「なら戦い続ける」


 


 


その判断だけは。


 


一切揺らがない。


 


 


■セラフィス神聖教国


 


「……魂の摩耗」


 


 


司祭が静かに言う。


 


 


「恐怖ではなく」


 


 


一拍。


 


 


「切断です」


 


 


誰も返答しない。


 


 


理解したくなかった。


 


 


■ヴァルハイン


 


「空白地帯化か」


 


 


レオナルトが地図を見る。


 


 


リューベル王国周辺。


 


 


そこだけ。


 


異様に静かだった。


 


 


「戦争を捨てた結果」


 


 


参謀が言う。


 


 


「戦争そのものへの執着を失っています」


 


 


一拍。


 


 


「国家としては致命的です」


 


 


レオナルトは黙る。


 


 


否定できない。


 


 


■レグナス(上層)


 


「外部」


 


 


ミレアが報告する。


 


 


「リューベル王国、空白地帯化進行」


 


 


カイルが小さく息を吐く。


 


 


「……怖いですね」


 


 


ヴェルドが頷く。


 


 


「当然だ」


 


 


一拍。


 


 


「戦争を終わらせた代償だからな」


 


 


■ルナたち


 


「……静かだね」


 


 


エリナが言う。


 


 


ルナは目を細める。


 


 


「うん」


 


 


「でも壊れてる」


 


 


レオンが笑う。


 


 


「死んでないだけマシか?」


 


 


ルナは少し考える。


 


 


そして。


 


静かに答える。


 


 


「どうだろうね」


 


 


■最後


 


リューベル王国は。


 


生きている。


 


 


だが。


 


熱がない。


 


 


怒りも。


 


執着も。


 


戦争も。


 


 


そこだけ。


 


世界から切り離されたように。


 


静かだった。


 


 


そして。


 


その静けさこそが。


 


世界に新しい恐怖を広げていた。


 


 


(次話へ)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ